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治療費計算のほか、がん治療に関する情報を集めました。
治療費の自己負担額

(公的保険と患者自己負担)

nissen,LIFE

がんの治療において、殆どの治療は公的保険の範囲内で行われていますが、新しい高度医療や一部の薬・器具等は公的保険でカバーされていません。今後医療技術 進歩のスピードがますます加速することが予想されますが、その一方、日本の財政事情を考えると、公的保険でカバーできる範囲を技術進歩のスピードに合わせ て拡大することは難しい状況にあります。そのため、公的保険でカバーされないがん治療の範囲はさらに増えるものと予想しています。

公的保険との関わりがあるがん治療費の自己負担のパターンは、概ね次のようになります。A、B、Cには、公的保険のカバーする治療とそうでない治療が混在しています。

公的保険が利用できる場合(下図緑色の部分のみ可能)

公的保険が利用できる場合
注)公的保険の患者自己負担割合を30%としていますが、患者さんの年齢により負担割合は変わります。さらに、後で述べる「高額療養費制度」の利用により最終的な負担は軽減されます。

がんの治療で問題になるのはBやCのケースです。Bは、公的保険の使える治療と使えない治療をいっしょに受けることになるため、本来公的保険が使える部分についてもすべて100%患者さんの負担となります。これを「混合診療禁止の原則」といい ます。判断が分かれるのはCのようなケースで、保険が使える治療と使えない治療について、異なる診療科を受診する場合にどうなるかという点です。
例えば、同じ病院の放射線腫瘍科で保険の使えない治療を受け、外科で保険の使える薬を処方してもらうような場合です。保険が使える治療と使えない治療をうける場合でも、Cのケースについて、異なる医療機関の異なる診療科を受診するのであれば、前者については保険の利用を認めているのが実情のようです。
ともあれ、保険の使える治療と使えない治療を同じ時期に受ける場合、医療機関により対応が異なることがあるようです。治療を開始する前に公的保険がどこまで使えるかどうか、受診される医療機関で説明を受けることをお勧めします。

(患者自己負担と高額療養費制度)

次に、患者自己負担についてです。上記のうち公的保険が利用できる治療の自己負担額については高額療養費制度により上限があります。その概要は次のとおりです。

公的保険を利用できる治療の自己負担額が毎月一定額を超えると、超えた額について後日還付請求をすると返還されます。自己負担額の上限は、所得や年齢により計算式が決まっています。
先進医療技術料や未承認抗がん剤・差額ベッド代等の保険の使えない治療の費用についてはすべて患者の負担で上限がなく、この計算式に含めて一度支払った自己負担分の返還を求めることはできません。
柔道整復師、あんま、はり等で支払った自己負担額で公的保険が利用できるものを計算式に含めることができます。
所得・年齢区分による自己負担限度額の計算式は原則として下表のとおりです。ここでは負担額の概算のみ示しています。実際には、医療費の総額により限度額が確定します。

高額療養費の月別自己負担限度額(平成24年9月30日現在)

  外来・入院区分 所得による区分
上位所得者* 一般 低所得者*
70歳未満の方 外来+入院(個人ごと) 150,000円強 80,000円強 35,400円
70〜74歳の方 外来(個人ごと) 44,000円 24,600円 8,000円 15,000円
外来+入院(世帯ごと) 80,000円 62,100円 24,600円
注)上位所得者とは概ね年収600万円以上の方をいいます。また、0〜74歳の低所得の区分は低所得者TとUの2つに区分されます。Uについては、年金年80万円以下等の方を含みます。
なお、70歳以上で、所得が「一般」区分の方の自己負担限度額について、平成20年4月から1年間は、外来+入院は44,400円、外来は12,000円に据え置かれています。

例えば、60歳で月収60万円の患者さんのある月の治療費合計が100万円としますと、その患者さんは医療機関の窓口で一時的に30万円を支払います。この方の自己負担限度額は上の表より15万円強ですから高額療養費制度を利用して、限度額を 超えて負担した15万円弱の還付請求を行うことが可能です。

高額療養費制度では、このほか、期間を限定した特別な措置や同一世帯で複数の高額自己負担が発生した場合の限度額の特例、さらに1年間で高額療養費を4回以上請求する場合の特例等さまざまな特例があり、日ごろ病気に縁のない方には極めて複雑な内容となっています。

がん治療を受ける方は高額療養費制度を使うことがほぼ確実ですから、治療に先立ち、がん拠点病院等に設置されている「がん相談支援センター」や各医療機関のソーシャルワーカーに相談されることをお勧めします。

限度額の利用にあたり注意すべき点は、一連の治療に関する自己負担の総額について限度額があるのではなく、あくまで月別の限度額を表しているということです。例えば、月収60万円の60歳の方は上位所得者として毎月最大で15万円強しか自己負担しなくてよいということになりますが、同じ治療費が発生した場合でも治療が月をまたぐかどうか、言い換えると、治療費が複数月に分割されるかどうかによって自己負担の総額には下記のとおり大きな差が生じます。
すなわち、治療が2ヶ月間にわたった場合、1ヶ月単位で自己負担額を計算すると、この方の例(ケース1)では1ヶ月あたりの自己負担額がそれぞれ15万円 で、各月の自己負担額の上限を超えないために、公的保険から全く還付がありません。高額療養費制度を利用するメリットはありません。
一方、すべての治療を1ヶ月間で完了させる(ケース2)と1ヶ月あたりの自己負担額は限度額を15万円超えることになり、その分が還付されることになりま す。治療は一般的に初期治療(「周術期」といいます)の間に総治療費の70〜80%が発生するといわれていますので、月の初めに入院して治療開始する場合と月の半ばに入院して治療開始する場合とでは自己負担額に大きな差が生じることがあります。これから治療を予定されている方は、ぜひ、入院前に実質的な自己負担額がどの程度の金額になるか医療機関とご相談ください。

治療の発生時期による自己負担額の違い

ケース1 1月と2月にそれぞれ50万円ずつ治療費が発生した場合 合計30万円
ケース2 1月中に治療が開始・終了し、治療費総額が100万円となった場合 合計15万円

(便利な制度:限度額適用認定証)

高額療養費の請求には「高額療養費支給申請書」を作成するほか、添付書類を整える手間もかかります。さらに、一時的にではあるにせよお金が戻ってくるまで治療費を自分で立て替えなければならないという経済的な負担もありました。
こうした患者さんの不便さ、一時立替の負担を緩和するために便利な仕組みが登場しました。「限度額適用認定証」といいます。がん治療のように、高額な入院治療を行うことが当初よりわかっている場合、「限度額適用認定証」を入手し、自己負担分の請求がある前に医療機関にこの認定証を提示すると、高額な自己負担額を一時的に立て替える必要がなくなります。限度額分だけ支払えばその月の残りの分の支払いは不要になります。治療をご予定の方は、ぜひ保険者*に問い合わせ、限度額適用認定証を入手のうえ活用することをお勧めします。

*注)保険者とは、大企業に勤務している場合:健康保険組合、官庁や学校にお勤めの場合:共済組 合、自社の健康保険組合がない、または業界の健康保険組合に入っていない中小企業に勤務している場合:全国健康保険協会、自営業等の方の場合:市区町村 (国民健康保険課)をいいます。この他に船員保険組合、国民健康保険組合等もあります。

なお、平成24年4月1日より、外来治療についても限度額適用認定証の利用が可能になりました。手術後の抗がん剤治療について、外来で治療を行う医療機関が増えていますので、この制度変更に伴い患者さんの治療費自己負担分の立て替え額が減少しますので資金繰りが楽になります。

限度額適用認定証を使った高額療養費制度の利用について整理すると以下のようになります。

1.自己負担限度額は、同じ月、同じ医療機関ごと入院・外来別に計算されます。
入院と外来双方を同じ医療機関で受診する場合であっても、自己負担限度額の計算は窓口支払い時点では別々に行われますが、後日、保険者(健康保険組合等)に入院の自己負担額と外来の自己負担額を合算して高額療養費支給申請を行うと、限度額を超えて支払った自己負担分が戻ってきます(合算できるのは、ひと月の自己負担額が21,000円を超えるものに限られますので注意が必要です)。

例:(70際未満、一般所得の患者さんの場合)
A病院入院:総医療費  500,000円
計算上の自己負担額(3割負担)  150,000円
限度額適用認定証を利用した場合の窓口支払い額  82,430円 @
@={80,100円+(500,000円‐267,000円)×0.01}
    A病院外来:総医療費 300,000円
          計算上の自己負担額(3割負担) 90,000円
          限度額適用認定証を利用した場合の窓口支払い額  80,430円 A
A={80,100円+(300,000円‐267,000円)×0.01}
    合算   :総医療費 800,000円
          この患者さんの当月の自己負担上限額 85,430円       B
B={80,100円+(800,000円‐267,000円)×0.01}
          高額療養費支給申請で戻ってくるお金の額  77,430円  C
C=(@+A−B)

上記の例において、入院治療を受ける病院と外来治療を受ける病院が異なる場合でも、窓口で自己負担した分を合算して高額療養費申請を行うことで、払いすぎた額が戻ってきます(合算できるのは、ひと月の自己負担額が21,000円を超えるものに限られますので注意が必要です)。

今回の改正により、外来化が進む抗がん剤治療や放射線治療時の立て替え負担が少なくなります。上記ポイント以外にも改正された制度移行時の細かな取り決めがあり、患者さんにはなかなかわかりにくい点も多くあります。がん治療では、入院・外来のいずれの治療においても高額療養費制度を利用する可能性が高いため、保険者(健康保険組合等)と密に相談しながら、必ず限度額適用認定証を利用して受診することをお勧めします。

(介護を受ける方が同じ世帯にいる場合の患者自己負担額)

同一世帯に介護保険を受けている方がいる場合、1年間の医 療保険と介護保険の自己負担額の合計額に上限が設定されました(平成20年4月より)。下記限度額を超えた額が「高額介護合算療養費」として戻ってきま す。高額療養費制度は1ヶ月ごとに計算しますが、この制度は1年間の合計額で計算しますのでご注意ください。なお、高額療養費制度を毎月利用した後に、1 年間の医療費自己負担額と介護保険の自己負担額を合計して高額介護合算療養費制度を利用することも可能です。

高額介護合算療養費の自己負担限度額(世帯単位)

  所得による区分
上位所得者 一般 低所得者
T U
70歳未満の方 126万円 67万円 34万円
70歳以上75歳未満 67万円 62万円 19万円 31万円
75歳以上 67万円 56万円 19万円 31万円

(医療費控除)

一度支払った治療費の自己負担分を取り戻す方法に「医療費控除」の利用があります。所得税 を計算するベースとなる課税所得から負担した医療費を費用として控除できる制度です。確定申告の手続きを得て、税金が還付される形で支払った医療費の自己 負担分を取り戻すことができます。

まず、控除できる医療費とは、次に示すような治療に要した費用のうち実際に支払った費用(自己負担分)をいいます。扶養している(同一家計の)配偶者、子供の治療に要した費用も含めることができます。

医師、歯科医師、はり師、きゅう師、柔道整復師などによる治療・施術に対する費用
先進医療の技術料や自由診療に基づく治療の費用
医師の処方箋をもとに調剤薬局で薬を購入した際の自己負担分や街の薬局で購入したかぜ薬・胃腸薬などの一般医薬品の購入費用
助産婦による出産の介助費用
保健師や看護師等による療養上の世話に対する支払い
介護老人福祉施設や介護老人保健施設に支払った施設サービス料(施設の種類により全額控除できるものと2分の1控除できるものがあります)
患者の通院費(交通費)や医師に往診してもらう送迎費
義手・義足・松葉づえ、補聴器などの購入費 等

上記①・②・③が、がんの治療費を構成する主要な項目になるかと思いますが、対象となる治療に公的保険が使えるかどうかに拘わらず、所得税に関する医療費控除は可能であることがわかります。また、通院・受診に伴う交通費も控除できます。

逆に医療費控除の対象とならない費用は次のとおりです。

i) 美容整形の費用
ii) 健康診断の費用
iii) 自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車料金
iv) 親族に対する療養上の世話に対する支払い

上記の他に入院時の身の回り品購入費、医師への謝礼等も控除の対象外です。 控除できない費用のうちi) については、上記Aで自由診療に基づく治療の費用が控除できるのと対照的です。ii)は治療に要した費用ではないので控除できないというもので、病気の予防目的に使う費用も控除できません。また、iii)はFと、iv)はDと比較すると控除のルールが見えてくるようです。ただ、控除できるかどうか判断に苦しむものもあります。がんの治療を自由診療で行った場合についてもAに含まれ広く控除の対象となりますが、例えば、乳房切除後の再建や頭頸部がん切除後の顔面再建等の費用はどのような取り扱いになるのでしょうか。金額もかなり大きなもの(50万円‐150万円程度)ですの で控除を受けたい項目のはずです。明確な線引きは難しいのですが、乳房再建を例にとりますと、形状の再建として手術前の元の状態に近づける場合は医療費控除の対象となります。
一方、この際ついでに豊胸まで行うということになれば控除対象外となる可能性があります。一般的に、再建にあたり自分の組織(皮膚、 腹部や背部の筋肉、あるいは腹部の脂肪等)を使用する場合には、公的保険も利用可能で、かつ医療費控除の対象になります。一方、人工物(シリコン等)を使用する場合には公的保険の適用がなく、医療費控除の適用にもならない場合があります。対象となる再建方法に関し、治療費の額、公的保険の利用、医療費控除 の有無等について、事前に医療機関と確認してください。

控除額を計算するにあたり注意すべき点は、高額療養費制度を利用して治療費が返ってきた場 合や民間の医療保険、生命保険等に加入していて医療保険金や入院保険金を受け取った場合には、すべて医療費控除を行う対象となる額から差し引かなければな らないことです。例えば、治療費は200万円だが、高額療養費制度を利用したので実際に負担したのは50万円で済んだ。しかも、がん共済の診断給付金が 50万円支払われたので実質的な負担はなかったという場合、この方の治療に関する現金の出入りは±0ですので、医療費控除を受けることができません。

次に、医療費控除ができる方の要件については次のとおりです。

所得税を払っていること
1年間の医療費の支払いが10万円を超える、または1年間の医療費の支払いが所得金額の5%を超えること

所得税を支払っていない方に控除はできませんし、自己負担額が少額の場合も原則として控除できないということです。
医療費控除は税金を取り戻す仕組みですので、手続きを進めるにあたり、いくら実際に税金を支払ったか、治療費を負担したかを証明する書類を残しておかなければなりません。具体的には、給与の源泉徴収票、医療費明細や領収書が必要になります。民間保険の保険金を受け取った際には受け取り金額がわかるものを用意します。
最後に、医療費控除できる額と実際に戻ってくる金額のイメージについてです。
控除できる額は、いままでの説明でも触れたとおり、次のような式で表すことができます。

医療費控除額 支払った医療費総額
    − 生命保険金等の受取・補填額あるいは高額療養費制度による治療費の返戻
    − 10万円(所得が200万円未満の方は所得の5%)

控除できる金額の上限は200万円です。計算期間は1年間(1月〜12月が計算期間)ですから、控除の対象となる医療費が毎年200万円発生すれば毎年控除できます。

医療費控除の手続きを行って実際に戻ってくる税金の額は次の式で計算します。

実際に戻ってくる金額(還付金) 医療費控除額 × 所得※に応じた税率
  ※注) 給与総額ではなく、世帯の事情に合わせてさまざまな控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除等)を差し引いた後の税金計算のベースとなる課税所得金額となります。

課税所得の水準により戻ってくる還付金の金額は異なりますが、課税所得金額が300万円前後であればかかった医療費控除額の10%弱、500万円であれば20%弱、1000万円前後であれば30%弱が目安です。課税所得が高くなるほど、所得税率も高くなりますので、その税率に従って戻ってくる金額も多くなります。
事例として、150万円程度の医療費控除額になった場合、課税所得金額が500万円であれば28万円程度、課税所得金額1000万円強であれば46万円程度戻ってくると期待できます。

医療費控除は、がんの治療を受ける場合、とりわけ先進医療や自由診療を治療の選択肢として検討する場合には、頭に入れておくべき制度といえるでしょう。

(対策)

がん治療費の自己負担額にご関心をお持ちになる方には、さまざまな事情があるはずです。 本サイトでは、次のような方々に本サイトの情報をご利用いただいていると想定しています。

1) 治療方法を決定し、あるいは治療中・治療が終了する予定の方
2) がんの疑い、あるいは確定診断を受けたためにこれから治療方法を決定し、治療費の支払いに直面する方
3) 将来、がんにかかった際に納得できる、十分な治療を受けることができるようにしておきたいという方
 

まず、1)の方は、医療機関から請求書が届くのを待つ状態にあり、当面負担しなければならない自己負担額については概ね把握できるはずです。 2)の方は、どの治療方法を選ぶかで当面の治療費が決まりますし、自己負担額も固まります。治療の選択にあたり確かに自分のサイフのことを心配しなければ なりませんが、通常は、ベストな納得できる治療法を選ぶはずです。選んだ治療法について、本サイトに該当する選択肢があれば、サイトの計算結果と自分の 所得や健康保険組合の付加給付を調べることで実質的な負担額を予想できるはずです。 一方、3)の方はこれから将来に向かって、ご自分の方針に沿ってさまざまな準備が可能です。とはいえ、実際にがんになるかどうかわかりませんし、仮になる としてもどのような種類のがんになるのか予想はできません。将来のがん治療に備え、事前にどの程度のお金を準備しておけば大丈夫とは断言できないのが実情 です。

以上のように、がんの治療費自己負担額について、短期的な予測は可能ですが、長期を見据えた信頼できる予測は困難であるのが実情です。そこで、対策もこうした事情をはっきり理解し、当面の対応と将来の不確実性を見据えた対応に分けて考えなければなりません。
当面の対応は1)や2)の方のオプションになりますし、将来の不確実性を見据えた対応は3)の方が主となります。
まず、1)と2)の方は、既に「がん」というリスクが現実的に発生している、あるいは発生しつつありますので、将来発生するリスクに対する備えである民間の保険や共済等に入ることはできません。そのため、現在持っている資産(貯蓄等)や保険契約、あるいは公的保険制度等をいかに活用して治療費を捻出する か、負担を軽減するかを考えなければなりません。治療のために使用可能と思われる「武器」を具体的にリストアップすると次のようなものがあります。

公的保険制度:高額療養費制度、保険者の付加給付、その他公的助成制度
民間がん保険・医療保険(生命保険の特約を含む)
貯蓄を含む金融資産
土地・建物等不動産
死亡保険付生命保険
保証ローン
無担保ローン
 

①について、日本は国民皆保険制度をとっていますので理屈の上ではすべての方が利用可能なはずです。まず、公的保険制度の利用そのものが治療費対策の最大の武器であることは疑いありません。公的保険制度には高額療養費制度もありますし、患者さんやご家族の自己負担軽減に大きく寄与しています。さらに、大手企業の健康保険組合や中小・中堅の同業者が集まって作った健康保険組合、さらに共済組合等に加入されている場合には、手厚い付加給付が支給されることがあります(給付内容は保険者毎に異なります)。高額療養費制度の利用で月額8万円あるいは15万円が自己負担の限度額という予想になる場合でも、そうした保険者の組合員であれば「月額3万円を患者負担の上限とする」といった支援が準備されていることがあります。自己負担額の個別相談にも乗ってくれるはずですので、健康保険組合や市区町村といった「保険者」を最大限活用することをまず考えましょう。

次に、公的保険で不足する部分を補ってくれるのがAの民間医療保険です。がんにかかった方、診断された方、疑いのある方は新たに加入できませんので、既に加入している保険について給付範囲を確認することに留まります。

③の説明は不要でしょう。豊富な金融資産があれば自己負担額に関する心配はありません。

④は、自宅以外であれば売却して換金し、治療費に充当できます。但し、売却には長時間かかりますし、不動産譲渡所得に対する課税への配慮も必要です。
また、自宅であっても、不動産に担保を設定して通常より低い利息で貸付を行っている金融機関があります。がん治療の分野では不動産担保金融はポピュラーで はありませんが、「リバースモーゲージ」と呼ばれるスキームが既に存在します。銀行・信託銀行に相談されるとよいと思います。ただ、一般論でいう と、日本の金融機関はがんというと直ぐに「死亡」=ハイリスクという風に直線的に理解し、病気・病期の持つリスクに応じて柔軟に利息を設定しないばかりか、ローンそのものへと踏み切らないところが殆どです。教育ローンという言葉は耳にされたことがあるかと思いますが、美容や審美歯科治療を除き「疾病ロー ン」のような治療に要する費用を対象にしたローンについて聞いたことがないはずです。がん治療についていうと、唯一、重粒子線の治療を行う患者さんに対 し、当該治療施設のある自治体の金融機関が、その治療施設と提携してローンを提供している例があるだけです。これは、重粒子線の先進医療技術料が300万 円前後と高額で、かつ自治体の税金を使って施設が建設されたために地元の方に配慮したものです。そのため、当該施設で重粒子線治療を希望するすべての患者 さんにローンを提供しているわけではありませんし、ローンの実行にあたり第三者の保証を求められることもあります。

⑤については、多くの生命保険については(貯蓄タイプのものを除く)、既に払い込んだ生命保険料の範囲内で、住宅ローンの利息よりもやや高い程度の利息でローンを利用できるはずです。それ以外の活用手段としては、いわゆる生命保険の「買取」や生命保険を担保とした ローンが考えられます。
前者については、米国で生命保険に加入していたエイズの患者さんに対し、その治療費に充てることを目的に始まりました。第三者が患者さんに一時金を支払う一方、患者さんの代わりに生命保険料を払い続け、患者さんが亡くなった際に患者さんに代って保険金を第三者が受け取るという仕組みです。患者さんは受け 取った一時金を治療費の支払いに利用します。第三者は保険金を割り引いて患者さんに支払うことにより利益を得ます。例えば、1000万円の死亡保険 付生命保険について900万円の一時金を患者さんに支払い、1万円の月額保険料を20ヶ月支払った後で患者さんが亡くなり第三者が保険金を受け取るとしま す。患者さんは900万円を治療に使います。第三者は20ヶ月で80万円(1000万円−900万円−20万円)の利得を得ることになります。この仕組み は、日本でも法的には実行可能ですが、患者さんが希望しても生命保険会社の承諾がないと実行できませんし(この判断は2006年10月の最高裁判所判決で 確定しています)、お金に窮した弱い立場にある患者さんを保護する仕組みが固まっていませんので生命保険会社の承諾が得られるに至っておらず、まだ普及し ていません。 一方、生命保険を担保とするローンは、「質権」や「譲渡担保」を設定することで可能になります。これも生命保険会社の協力が必要ですが、患者さんが亡く なってローンを完済できない場合であっても、その一部を生命保険金によって返済に回す仕組みです。生命保険の買取に比べると、一時所得への課税がなくなる ので税金面で有利になるはずです。
いずれも、死亡保険付生命保険に加入している場合であって、自分が死亡した後で保険金を受け取る家族がいないような場合、その保険金を生きているうちに自分自身の治療のために使いたいという患者さんのニーズはあるはずで、最近、実際にこの仕組みを使って治療費に充当する例が現れているようです。

⑥は、家族や第三者に保証人になってもらいお金を借りる仕組みです。

⑦は、消費者金融やフリーローンと呼ばれているものです。担保や保証人を探す必要がなく使い勝手は良いでしょう が、利息が高いのが特徴です。固定収入が期待できず、長期の療養を必要とするがん患者さんの必要資金調達手段としては不適であると思われます。過去、ロー ンの条件として生命保険への加入を求めるものが多くあり、ローンを借りた多くの方が自殺して、借主に強制的に加入させた生命保険の保険金でローンを弁済さ せるという実態がマスコミで取り上げられ大きな社会問題となりました。

次に、将来がんになった時の備えとしては、一般的には民間のがん保険や医療保険に加入する方法があります。日本 では先に述べたとおり公的保険制度が充実していますが、一部の治療には保険の範囲内であってもかなり高額な自己負担が発生します。その治療を続けることに 伴う出費が、乗用車1台を購入することに十分匹敵するようなケースもあります。さらに、再発予防、あるいは再発・進行したがんの治療にあたり、有効な治療 選択肢のすべてが保険診療でカバーされているわけではありませんし、国の保険財政がパンクしかけている現在、これから登場する新しい医療・高度な医療につ いて、すべて公的保険でカバーできると期待するのは現実的ではありません。一方、この対策として青天井の出費を想定して高額な民間保険に複数加入するのも 月々の保険料が家計を圧迫する原因となります。家族構成やライフステージに合わせて貯蓄や保険を組み合わせた方法を検討すべきでしょう。

具体的な保険商品について、本サイトで推奨するものは特にありません。各人の事情に応じ、その方針に沿って加入 されるとよいと思います。個人により保有する資産の状況や不確実性に対する態度が異なりますので、一概にどれがベストな保険であるとはいえません。ここで は、医療保険・がん保険を選択するにあたり、がん治療の実態と将来を見据え、次の3点だけアドバイスさせていただきます。

がん年齢を考えて保険商品を選択すること。具体的には、女性は40代、50代にかかるリスクが最も高くなるがん(例:乳がん)があること、男性は高齢化に比例して殆どのがんのリスクが高くなることを考えて保険商品を検討すること。

入院期間が短くなり、抗がん剤治療・放射線治療も外来(通院)において行われる流れにあることを踏まえて保険商品を検討すべきこと。すなわち、外来(通院)により治療を行っても、入院で治療を行っても同様な給付が行われる内容になっていること。

がん治療は、周術期、再発予防治療期、リハビリ期に分けたうえで、それぞれの時期の負担を想定し保険商品を検討すること。周術期の手術や放射線治 療だけで治療が終わるわけではなく、使用する抗がん剤によっては周術期よりも多額の自己負担が発生することがあり、リハビリについてもリンパドレナージの ように公的保険が使えないものが多くあることを理解しておくこと。
 
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