大腸がんの治療選択肢
大腸の長さは約2メートルあり、大きく分けると、結腸、直腸、肛門から成ります。この範囲にできるがんを大腸がんといいます。大腸がんは大腸内側の表面をおおう粘膜から発生しますが、正常な粘膜から直接発生するがんと、腺腫という良性のポリープからその一部ががん化するものがあります。
大腸がんの進行度(病期=ステージ)は、がんが大腸の壁をどのくらい深くまで入り込んでいるかと、リンパ節転移・遠隔転移がどの程度あるかで判断されます。がんの深さが粘膜および粘膜下層までのものを「早期がん」、粘膜下層より深いものを「進行がん」といいます。がんが大腸の壁の内側から外側に向かって深く進むに従って、転移することが多くなり治癒が困難になるため、できるだけ早期での発見と治療が重要です。
早期大腸がんの主な治療選択肢は、開腹手術に加え、内視鏡手術、腹腔鏡手術です。状態により再発予防の抗がん剤治療が加わります。進行がんの場合、切除範囲を拡大した手術と薬物療法、および両者の組み合わせで治療します。
大腸がんのうち、直腸がんでは再発予防治療、もしくは骨盤内に再発した場合の治療を目的に放射線照射を行うことがあります。
大腸がんの治療費と自己負担額
大腸がんのうち、結腸がんに焦点をあて、結腸切除術、および結腸切除術と抗がん剤治療を組み合わせた2種類の治療(早期がん対象と進行がん対象)の計3つの事例について、概算治療費用、および自己負担額の目安について解説します。直腸がんの場合でも一部結腸がんと異なる治療を加える場合はありますが、治療費の構造はほぼ同じです。
なお、がんの治療内容の大枠は、がんの種類にかかわらず共通しており、必要な治療費も、がんの種類よりもその進行度に大きく影響を受けます。早期がん、進行がんで見たがん治療の概要や治療費の構造については、まずこちらのページをご覧ください。→がんの治療費TOP
表記の「定期検査」は、手術や抗がん剤治療が終了した後に行うものを指しており、治療中に行われる検査等の費用は、治療費用の中に含めています。
差額ベッド代は一切含んでいません。
1 早期結腸がん:切除手術
早期結腸がんの切除手術では、初期治療(手術+入院+治療中の検査)の費用については公的保険の高額療養費制度が利用可能です。ここでは17日間の入院を想定して計算していますが、入院期間が1日長く、あるいは短くなる毎に総治療費が2万円程度上下します。自己負担額の合計は、初年度12万円弱、2年目4万円、3年目以降は毎年2万円程度となります。
2 早期結腸がん:切除手術+術後再発予防抗がん剤治療
手術でがんを取り除いた後、再発予防として抗がん剤治療(フルオロウラシルとレボホリナートの併用)を行う治療費の事例です。初期治療(手術+入院+治療中の検査)部分については高額療養費制度が利用可能です。但し、手術後半年間にわたり行う抗がん剤治療の治療費については、総額は90万円以上と高額になるものの、1ヶ月あたりの治療費は高額療養費が利用できる金額未満となり、制度が利用できません。結果として初年度の自己負担額は合計すると38万円強になります。入院期間が1日長く、あるいは短くなる毎に総治療費は2万円上下します。
3 進行結腸がん:切除手術+術後再発予防抗がん剤治療
がんが粘膜下層より深く進んだ進行がんで、切除手術と術後抗がん剤治療が可能な場合です。抗がん剤治療の内容は、このケースで一般的に行われるFOLFOX療法*で治療費を計算しており、抗がん剤投与は6ヶ月続きます(手術、抗がん剤を含めた治療期間は約7ヶ月)。この治療では月々の治療費が大きくなるため高額療養費制度が利用でき、自己負担額は、切除手術を含む最初の3ヶ月間は毎月8万円強、残りの4ヶ月間は毎月4万円強の負担となります。定期検査は治療終了後、特に異常がない場合の費用を想定していますが、再発の兆候や疑いがある場合には検査の頻度・内容が変わるために費用は増加します。
*:FOLFOX療法=フルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチンの3剤を併用する化学療法
4 進行大腸がん:抗がん剤治療
手術不能な進行大腸がんの抗がん剤の治療費については、本サイトの「抗がん剤の治療費」をご参照ください。患者さんの体重や身長により抗がん剤の使用量が変わるため、同じ治療を受けてもその治療費には差が生じることに注意が必要です。
- 参考文献
- ・大腸がん研究会編 肺癌診療ガイドライン2017年版
- ・大腸がん研究会編 患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2014年版
- ・国立がん研究センターがん情報サービス それぞれのがんの解説「大腸がん」