がん治療と脱毛について
がん治療には、外科療法(手術)、放射線治療、薬物療法(抗がん剤治療、ホルモン療法)などがあります。そのうち、一部の抗がん剤治療において脱毛の副作用症状が出るものがあります。
個人差はありますが、多くの場合、抗がん剤を投与して10~20日頃から脱毛が始まり、髪以外の部分(体毛・まゆ毛・まつ毛、陰毛)でも脱毛が起きます。治療を終了するとおおよそ3~6ヵ月後には再び生えてきます(髪の毛については、抗がん剤治療終了後8ヶ月~1年位でショートスタイル程度に回復します)。 治療時の頭皮ケアの仕方によって、自毛の戻り具合に差が出ますので適切なケアが必要です。
脱毛が始まった当初は、寝起きの枕の上に抜け毛の多いことに気付きますし、ブラッシングした際などに髪が抜ける量が多いと感じます。この対処として、治療後にこうした現象が起こるという覚悟を決めておき精神的なショックを和らげることが大事です。また、脱毛が始まる前にあらかじめ髪を切り、短くしておくと、入浴時のシャンプーや部屋の掃除の際に抜け毛が気にならなくなりますし、長い髪が抜けていくのに対して、多少なりと精神的ショックが和らぐことも期待できます。
まつ毛については、脱毛すると光がまぶしく感じられますので、日差しが強い季節はサングラスの着用も有用です。また、鼻毛が脱毛すると鼻が乾きますのでマスクの準備も大切です。
がん治療による脱毛について詳しくはこちら
がん治療新時代WEB「化学療法や放射線療法の副作用による脱毛を理解しておきましょう」
脱毛対策の中で患者さんの生活の質を維持・向上させる上で、最も重要なもののひとつがウィッグ(かつら)です。ここでは、脱毛対策の中で最も大きな買い物となるウィッグについてその費用をご紹介します。ウィッグには、健常人の方がファッションの用途で使用するものがありますが、がん患者さんが治療の副作用である脱毛対策で使用するものは「医療用ウィッグ」と呼ばれ、機能なども違ってきます。
医療用ウィッグとは
医療用ウィッグとは、抗がん剤治療による脱毛をカバーするために、一時的に着用するウィッグのことを言います。2015年4月、医療用ウィッグのJIS規格が制定されました。この規格では直接頭皮に接触する部分に対しての皮膚刺激数や有害物質の検出度、耐久性、それぞれの試験方法などを細かく定めたものですが、加えて、ウィッグメーカーがそれぞれ、患者さんに配慮した商品づくりをしています。
一般的にウィッグは自毛の上から着用しますが、脱毛した患者さんの場合は地肌に直接ウィッグを着用することが予想されます。そのため、ウィッグを医療用に使用する場合は、頭皮の汗や皮脂を吸収するウィッグ下キャップの着用や、デリケートな頭皮に優しい素材を随所に使用し、髪の毛の分け目が自然に見える人工皮膚をつけるなどの工夫がされています。毛髪の材質や値段についても幅があり、仕事などで長時間着用するのか、あるいは外出時のみの使用か、ご自身の生活スタイルや使用頻度に合わせてお選びになるとよいでしょう。
生活の質の維持・向上と自分らしい生活を送るために
治療が終わってから元通りの髪の長さに戻るまで目安としては約1年半~2年かかります。それまでは髪の量に合わせて頭のサイズが変化しますので、ウィッグのこまめなサイズ調整ができると安心です。また、一度抜けた髪の毛が生えても、髪質の変化や急激な白髪の増加、頭頂部や前髪などが発毛しにくいといった人もおり、治療中の正しい頭皮ケアが重要になります。治療の流れに沿ったフォローや頭皮のマッサージ方法などさまざまなアドバイスを受けられるウィッグメーカーもありますので、脱毛があるタイプの抗がん剤治療を受ける予定が決まったら、治療を開始する前に相談しておくことをお勧めします。
例えば、脱毛した髪がからまないように抗がん剤投与の2~3週間前からご自身の髪をカットしたり、頭皮が敏感な時期のシャンプーやケアの方法、また脱毛による頭のサイズの変化をふまえたウィッグサイズの調整など、患者さんの気持ちに寄り添ってアドバイスをしてくれるところを見つけておくと安心です。治療中であるかにかかわらず、自分らしい生活をすることは生活の質を維持・向上するうえでとても大切なことです。
以上の点をふまえ自分にあったウィッグを見つけてください。